弁護士法58条の形骸化
先日の『たかじんのそこまで言って委員会』で、橋下徹弁護士が、光市母子殺害の弁護団の懲戒請求は簡単にできるから、この弁護団に疑念を持つ人は弁護士会へ請求してはどうか、との発言を受けて、各弁護士会へ多数の請求があったようだ。
そして、この異例な請求に対し、弁護士500有余名が、「いたずらに懲戒請求を行い、これを煽る行為は違法であり、直ちに中止することを求める」といったアピールを発表した。
また、これら懲戒請求が根拠のないものとして、不法行為(民法709条)にあたり、損害賠償責任を負いかねないので、即刻懲戒請求を取り下げた方が身のためですよ、というありがたい忠告をしているサイトもいくつか見られる。
光母子殺害の弁護団、そして、この懲戒請求に対して中止を求める弁護士たち、さらに、請求を取り下げた方がいいとお節介を焼いてくれる専門家たちへ抱く私たちのこれら違和感の正体は一体なんだろうかと考え込んでしまった。
一体どのような場合であれば、弁護士に対する懲戒請求ができるのかというのを調べてみた。
いくつか、懲戒請求に関する判例を読んでみると、結局のところ、告訴や告発と言った通常の裁判と同じような重大さがなければ、懲戒請求は不法行為に相当するとしているようだ。
つまり、弁護士に対する懲戒請求というのは、通常の裁判と同じくらいのハードルがないとできましぇ~ん。そうじゃないと、権利の濫用という不法行為に当たるわよ~と脅しているのである。
確かに、法律家としては、大した理由もなく懲戒請求されたらたまったものではないというところか。
さて、問題はこれら判例の根拠となっている弁護士法第58条1項である。
しかし、この弁護士法58条というのは形骸化している。
なぜなら、広く一般に弁護士の懲戒請求を認めておきながら、その一方で、それ相応たる理由が必要であるとともに、請求がなされたというだけで、当該弁護士の業務が妨げられ、名誉・信用が傷つけられるおそれがあるとしている点で、濫用は許されないというのが判例の主旨だから、もはやこの弁護士法58条が弁護士会において機能することは期待できない。
業務に支障をきたし、名誉・信用が傷つけられるという”おそれ”があるだけで、懲戒請求ができないというなら、明白な法令違反でもないかぎり、一般人が懲戒請求する余地などないではないか。
形式的には、弁護士への懲戒請求を広く一般に認めておきながら、事実上、その権利を行使することは著しく制限されており、弁護士会が処分をするのは明白な法令違反のような行為だけというなら、弁護士会の自治は機能しないに等しい。
懲戒請求に反応する法曹界の人にとって弁護士法58条というのは、伝家の宝刀なのだ。
結局、現状ではこの条文のために、事実上一般人が弁護士会へ懲戒請求できるのは、告発・告訴に準ずる行為があった場合のみであり、他の懲戒請求は一切弁護士会では考慮されないといっても過言ではないだろう。
だが、方法がないわけではない。
お節介焼きの人々がいうように、不法行為責任を恐れて、懲戒請求を取り下げてしまうのではなく、その懲戒請求数が増えていけば、弁護士会としても無視できなくなってくる。
如何に弁護士会の自治機能が期待できないとはいえども、多数の請求が来れば何らかの対処をせざるえないだろう。
私たちが形骸化された弁護士法第58条を打破できるとしたら、数の論理に頼った民意しかない。これが現状でできうる唯一の手段だろう。
彼らは『私たち専門家の領域に口をだすな。』といわんばかりに、懲戒請求は違法だとか、このままだと損害賠償責任を負いますよ、と言うが、彼らは通常の社会人と異なり、司法修習制度により国家によって育成された半公人であり、謙虚に国民の意見に耳を傾ける義務があるはずだ。
被疑者のために、国家権力の横暴から守るのが弁護士の役目だというなら、今回の事件のように罪の重さが争点となっている裁判にまで、その論理と職務を求めるのが果たして適切な議論かどうか非常に疑わしい。
なぜなら、今回のような死刑が問われるような犯罪においてのみ、このような突拍子もない主張が繰り返されるからだ。
通常の極刑にかかわらないような裁判では、刑の減刑を求めて罪を素直に認める戦略をとるのが最善とされるのと、不整合である。
小生のように今回の弁護団に対して疑念を抱く人々や、懲戒請求を求めている人々は、こういった極刑を求める裁判においてのみ、このような被害者をはじめとした被害者家族を貶めるような発言、主張を行なう弁護活動について疑問を呈しいてるのであって、弁護士活動を通じて行なうクライアントの意向に沿った弁護活動までも断罪し是正を求めているのではない。
そして、この点において弁護士会の自治機能を期待できないからこそ、懲戒請求という手段をとっていることを弁護士をはじめとした法曹界には自覚していただきたい。
このような主張及び、懲戒請求に過剰なまでに反応するのは、彼らが自分たちは特別であるという選民思想を表現してるからに他ならない。この思想こそが私たちの感じる違和感の正体である。
大体、懲戒請求(裁判で言えば、告訴・告発)されただけで、業務に支障をきたし(なぜ業務に支障をきたすのか不明)、名誉や信頼が傷つけられるほど、柔なのだろうか。
むしろ、そういった批判を受け入れることもないという点において、法曹界の特権思想と談合気質があるといえる。




Comments
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Posted by: Martha Golden | October 16, 2007 at 08:53 AM
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Posted by: Lanette Yang | October 19, 2007 at 07:57 AM